2024年5月号
むし歯は歯磨きをしていればならないというわけではありません。一生懸命歯磨きしているのにむし歯が次々とできる方がいらっしゃれば、それほどしっかり歯磨きをしていないのにむし歯ができないという方もいらっしゃいます。それは、むし歯になるのは多くの要因が絡んでいるからです。歯を攻撃してむし歯を作ろうとする「リスク因子」とむし歯にならないようにする「防御因子」の力関係でむし歯になるかどうかが決まります。
まず「リスク因子」というのは、歯の脱灰。つまり歯を溶かし壊す要因のことを指します。「防御因子」というのは、歯の再石灰化。つまり歯を守る要因のことを指します。これらの要因のバランスは、常に揺れ動いています。むし歯になりにくくするには、「リスク因子」を減らし、バランスを「防御因子」に傾けることが大切です。
それでは具体的にどういった行動がこれらの要因にあたるのか説明させていただきます。
まず、「リスク因子」は・むし歯菌が多い・ダラダラ食べ・唾液量が少ない・不十分な歯みがき等が挙げられます。反対に「防御因子」は・フッ素を使っている・むし歯菌が少ない・適切な食生活・唾液量が多い・適切な歯みがき・歯科に定期受診している等が挙げられます。
「リスク因子」において・むし歯菌が多い人・不十分な歯磨きの人は、お口の中に細菌のかたまりであるプラークが多いです。毎日の適切な歯磨きにフッ素配合歯磨き剤を使い歯質を強化したり、歯ブラシ以外にデンタルフロスも使ったりとリスクを効果的に減らすことができます。適切な歯みがき方法を知りたい方は歯科医院で教えてもらってくださいね。そしてダラダラ食べは、食事の量ではなく飲食回数が多くなると、お口の中のpHがずっと下がった状態になり脱灰が起こり続けてしまいます。一般に、食事で歯が溶けてしまっても食べてない時間に歯の成分が戻ってくる再石灰化が起こって歯の健康は保たれます。従って再石灰化の時間をしっかりと確保するためにメリハリをつけて食事しましょう。また・唾液量が少ないに関しては、唾液には歯を溶かす酸を中和したり、脱灰で溶け出した歯の成分を元に戻したりする働きがあります。そのため ・良く噛んで食べる・キシリトールガムを噛む・唾液腺マッサージをすることが有効です。
日々の生活の積み重ねでむし歯ができてしまいます。歯を磨いているからと油断せず、リスク要因を減らすことで、より歯の健康は保たれます。意識して生活してみてくださいね。
次回のQは・・・・
「口の中に被せ物や詰め物がたくさんあります。すでにこんな状態だと定期的にメインテナンスを始めるには遅すぎるのでしょうか?」です。
受付 中村りこ
2024年4月号
前回では歯ぐきの深い部分の清掃についてお話させていただきましたが、今回は歯ぐきの浅い部分のセルフケアについてお話させていただきます。
まず、歯と歯の間や歯ぐきの溝の清掃用具として、おもに歯間ブラシとデンタルフロスの2種類があります。歯ブラシのみでは歯面全体の約65%のプラークしか除去できません。そして、歯と歯の間(歯間)はむし歯ができやすい部位です。そのため歯間の清掃のために歯間ブラシやデンタルフロスは健康な方でも必要なのです。
歯間の清掃が必要といっても、どれを選択してどのように使用すればいいのか知るのは難しいですよね。簡単にデンタルフロスと歯間ブラシのそれぞれの特徴を説明します。
<デンタルフロス>
歯間や歯周ポケットを効率よく清掃することができます。歯間が狭い方はデンタルフロスを選択するのがよいでしょう。
ワックス付きのフロスは滑りがよいため、はじめてフロスを使う方やフロスが引っかかりやすい方におすすめです。一方ワックス無しのフロスは、ワックス付きよりも歯面の汚れを落としやすいです。
指巻きタイプやホルダー付きのものがありますが、奥歯などフロスの使用が難しい部位には、当院でも販売しているY字のホルダー付きのものがおすすめです。
また、ブリッジの歯と歯がつながっている部分には、普通のフロスは通せないので、スーパーフロスという端が硬く糸通しのようになったフロスがあります。
<歯間ブラシ>
歯ぐきが下がり歯間が広い部分に適しています。サイズは小さい順にSSS、SS、S、M、L、LLまであります。
基本的には、軽くブラシがしなる程度に無理なく通せるサイズのものがよいでしょう。
ブラシのサイズが大きすぎるものを選んでしまうと無理に通すことになり、芯の金属のワイヤーにより短期間でも歯が削れてしまったり、歯ぐきが下がってすきっ歯になってしまうことがあります。歯や歯ぐきを傷付けないためにも、また歯間がすべて同じ大きさではないので、サイズ選びはとても注意が必要です。
そのため、当院では患者様に合ったサイズをお選びしますので、サイズが分からない方や使い方が分からない方もお気軽にお尋ねくださいね。
歯ブラシだけでなく、補助的な清掃用具も一緒に用いて健康的なお口の中を目指しましょう。
次回のQは・・・・
「むし歯になりやすい人となりにくい人には、なにか違いがあるのですか?」です。
歯科衛生士 福井万緒
2024年3月号
「口を開けるときに音が鳴る」、「口を開けるときや噛みしめた時に痛みがある」、「口を大きく開けようとしても開けられない」これらのうち1つでも症状があれば顎関節症だといえます。ですがこの3つは重症度が違い、痛みがある場合や、口が開けにくい場合はなるべく早く歯科を受診しましょう。
音が鳴るだけでしたら特に治療を必要とはしませんが、何気ない日ごろの動作が気づかないうちに「顎関節に影響する習慣」になってしまっているかもしれません。チェックしてみましょう!
うつぶせ寝や睡眠中のことはすぐに変えられることではありません。ですので、自覚しやすく、変えやすいところから変えていきましょう。意識して変えられることのひとつが「スマホ」です。しかし、スマホをやめろということではありません。スマホを見るときの姿勢の改善や、こまめに休憩することを意識して使いましょう。
もし、「顎関節症かも?」と思ったら、様子見をするのは1週間ほどにして、すみやかに歯科医院を受診しましょう。
次回のQは・・・・
「歯間ブラシとデンタルフロスって、どっちでもいいの?」です。
歯科衛生士 長船瑞稀
2024年2月号
奥歯を失うとしっかりものが嚙めなくなり、咀嚼能力が低下します。咀嚼能力が低下すると食べにくくなるものの代表格が「肉と野菜」です。たとえば、最近うどんやラーメンなどの麺類や、カレーライスばかり食べていませんか?このような食事は、カロリーオーバーになりやすい反面タンパク質やミネラル、ビタミン、食物繊維などが少なく、深刻な栄養不足を引き起こしやすいのです。奥歯がなくなるということは、食べ物がしっかり噛むことができないので食事がしにくくなりその結果やせて、ダイエットになるかと思いきや、肥満につながりやすいうえ、低タンパク質で筋肉が減ってしまうので健康のためには逆効果です。
上記のような食事をしていて、実際に痩せた方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、もしかしたらタンパク質不足で体の筋肉量が減って「サルコペニア」になっているのかもしれません。サルコペニアとは、加齢によって生じる筋肉量・筋力の低下のことで、高齢者の体力や運動機能を急激に低下させ、つまづきや転倒の原因として問題視されています。
これら3つのうち1つでもできないものがあれば、サルコペニアの可能性があります。サルコペニアは、肥満ぎみの方も痩せ型の方も関係なく陥る状態ですので、もし今奥歯がなくて、柔らかい手軽なお食事ばかりの方は一度チェックしてみてください。
摂取したタンパク質を使って効率よく筋肉量を維持するには、野菜に豊富に含まれるビタミンやミネラルも欠かせません。例えばビタミンEは筋肉増強効果を、ビタミンB6は筋肉の分解と合成を、マグネシウムはタンパク質の代謝を促進するという重要な役割を担います。サルコペニアにならないためにも、歯科治療で肉や野菜もしっかり噛めるお口を取り戻し、健康なからだにしていきましょう!ただし食べすぎには注意してくださいね。
次回のQは・・・・
「顎関節症は生活習慣と関係があるって本当?」です。
歯科衛生士 長船瑞稀
2024年1月号
ものを噛むと自然に口の中に唾液があふれてきます。そこでは唾液そのもののチカラと噛むという行為が全身におよぼす効果により、我々の健康は支えられています。前回(2023 8月号)では唾液のもつチカラについてお話させていただきましたが、今回は噛むという行為が全身におよぼす効果についてお話しします。
長時間ガムを嚙むと、顎の筋肉の筋トレをしているようなものなので、顎関節や顎筋に痛みが出る恐れがあります。片方ばかりで噛んでいるとそちら側の筋肉が太くなり顔が歪んでみえることもあります。
歯に詰め物や被せ物があり、過度な力を入れて噛んでいるとそれらが壊れてしまうときがあります。またそれらがガムにくっついて取れることもあります。
次回のQは・・・・
「奥歯がなくなると太るって本当?」です。
院長
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